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50話 秘めたる技とミリアの優しさ

作者: みみっく
last update 最終更新日: 2025-08-06 07:00:05

 ――あー、放っておいたら集まってきたか。

でも、誰も見てないし……

 ちょっとくらい、やってみてもいいよな?

昔から憧れてた、あの技。

俺は剣を軽く構え、調子に乗ってクルリと回転。

 斬る“真似”をしながら、バリアを展開する。

 ――ヒュン、ズバッ!

風を切るような音が響いた。

次の瞬間、周囲の盗賊たちが――

 まるで時間が止まったように、その場で崩れ落ちていった。

回転の一振り。

 それだけで、残っていた盗賊はほぼ全滅していた。

 ……うわっ。

これ、めちゃくちゃ格好いいな。

ずっと一度やってみたかったんだよな~この技。

 ゲームの必殺技みたいな爽快感がある。

 風を巻き込んで、敵を一掃する――まさに理想の“あの一撃”。

 ……うん、気分が良い。

でも、これ誰かに見られてたらちょっと恥ずかしいな……。

数人の盗賊が、逃げるように森の中へと消えていった。

 でも、俺は深追いしなかった。

 ――討伐に来た冒険者じゃないし、兵士でもない。

 他の人の“仕事”を奪うのは、ちょっと違うよな。

俺は……ただの薬屋だし。

ふと視線を感じて振り返ると、御者席にいた王国の兵士と目が合った。

彼は、完全に呆然としていた。

 口は半開き、目は大きく見開かれたまま、まるで時間が止まったように。

 ――うわぁっ。見られてた!

でも、まあ……バリアがバレてなければセーフか。

 剣を振ってるように見せてたし、あれなら“すごい剣技”ってことで通る……はず。

 ……いや、でも恥ずかしいんですけど!

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